― 騎士と乙女 ―
白い絹の手に 口づけ落とし
騎士は誓いの剣を 乙女に捧ぐ
広い銀の背に
乙女は加護の祈りを 騎士に捧ぐ
騎士と乙女 二人瞳を交わし
心の鍵預けあい 微笑み浮かべ
騎士は戦へ 乙女は城へ
互いの生きる地で あの日の約束想う
[長話の果てに所望されたのは昔からの夫人のお気に入り。ゆったりとしたメロディに乗せたアルペジオは、第二の客間の壁を越え、屋敷にも響いただろうか。
夫人がこの曲に想いを馳せる理由が、得られなかったものへの憧れか、失ったものへの惜別か、はたまた只の享楽なのかは知れないけれど。望まれるものを歌うのは吝かではない。]