[サシャが病によって五感の一部を奪われた後も、
子供ならではのコミュニケーション力で自然に意思疎通手段を編み出し、取り立てて関係は変わらなかった。
尤も、耳が聞こえぬことを奇異に思うことがなかったゆえか、多感な時期に閉じこもりがちになったサシャを無理に引っ張り出そうとして泣かせそうになったり、ディークらと行う男の子遊びを覚えてからは若干距離遠くなったりはしたものだが、それから然程経たぬうちに「クマ」事件が起きて、昔のように言葉を交わすようになったのだから誤差といって良いだろう。
エドルファス自身は「仲間が増えた」感覚で彼らとの交友関係を温めていた。
6年前に、彼らの居る土地を遠く離れるまでの話だ。]