そういえば、エルンスト・ヒンメルは、他国の出身らしいね。
生前は傭兵団にいたと聞いたけど。出自はどこだっけ。
ああ、資料によれば、――……どこかの少数民族みたいだね。
[再び、頁を捲る音。……手近にあった、ただのダイムノベルである。
本当に捲っているのは脳内の資料室。
彼の出自ははっきりとは知らないが。
少しだけ聞いたことのある故郷の食べ物の話や、故郷の風習の話を手掛かりに。
各地の風習や民俗学の本を頭から捲り、そこから似たようなものを選び出し、より分け続けていたことがあった。
絞りきれはしなかったが。……口にするのは、曖昧なものでいい。
この数年、何もしていなかったわけではない。
……彼の手がかりを、丹念に追っていた日々]