[”犬だか狼だかが二匹。”>>#3突然そんなことを言い出したゲルトへ、誰にも気付かれないよう不穏な視線を向ける。大部分の人間にとって、恐らくはいつもの寝言と解釈されそうな台詞、しかし豊穣の村には100年前に起きた惨劇の噂と資料が残っている。しかも宿屋にいる多くの村人が聞いてしまった、いつ誰がそれを本気にして、人狼は実在していると騒ぎ出すか分かったものじゃない。そして男は、この宿に人狼が二人存在することを知っていた。その身を持って――。]