(>>195)
[金糸の上官の姿を認めると、改めて背筋を伸ばし、少し離れた処で指先に緊張が走る敬礼をする。自分のタイとは違う、士官を表す、そのタイの色。]
失礼します!…お食事中のところ申し訳ありません。出直して参りますが。
いえ、わたくしの様な若輩にお任せいただきまして有難うございます。
[あまり功を奏したとは言えないオリエンだったが。口中上がる苦みを抑え、労いの言葉に礼を述べた。手に持つ野菜ジュースを見て伺うが、許可を与えられれば報告を始める。必要な書面は全て揃った旨。乗客は今のところ船酔いなどの不調の様子はなく、島への到着を待つのみの旨等。]
[自分の報告を終えればまず一つめ。乗客個々に纏められたファイルを手渡した。二つ目。]
中尉殿でしたら、乗船の際確認いたしましたが、その後は船内ではお見掛けしておりません。また、オリエンにご不在の理由も特にお伺いしておりません。お申し付けいただければ、お探ししてお連れいたしますが。
[上官の意に対しては、下官の知らぬ謀もあるだろう、詮索せず、意も問わないから、愚直に答えた。]