―緊急脱出口―
[カサンドラの手を握り、体調は大丈夫なのかと様子を伺いながら通路を歩く。
知らぬ者が見れば何気のない日常の1シーン。
それでも二人にとっては、捨てることの出来ない大事な1シーン。
やがて着いたのは、ここ数日恐らく誰も寄り付かったであろう地。
慣れた手つきで機械を操作。
扉を開ければ数秒後には自動で閉まるように設定。
但しロックはされない。扉が開きっぱなしにならぬ為の配慮。
出向中といえど、管理部の人間として権限をそれなりに所持していたことが幸いした。
既に乗客や船員達が避難を済ませ数日。
当然脱出ポッドなんて残っていない。
皮肉にも、己が故郷で先に脱出させられた時とは逆の立場である。
前回は先に飛ばされ、今回は残された身。]