― 追撃 ―[人間を追いかけて、狼牙族は本隊よりもずいぶんと先行していた。巨大な戦斧を振り回しながら先頭を走っていたオークに、不意に矢が突き立つ。痛みに咆えたオークを、同調して猛る巨狼を、幾本もの矢が襲った。針鼠のようになって倒れた仲間を目の当たりにして、後続は一瞬戸惑う。判断の遅れは、彼らの命を代償にした。幾匹もの仲間を犠牲にしながら、残るものたちは這う這うの体で矢の射程外へと逃げていく。追撃などもはやできる状況ではなかった。]