ー回想・とある酒場ー
銀羊号?
[酒場には音楽がつきものだし、洒落た酒場にはピアノはつきものだ。…と勝手な自論を展開しつつ、弾き終えたピアノをのフタを閉じて話し掛けてきた男の言葉に、質問で返す。どうやら、世間一般には銀羊号の名は知れ渡っているものらしいが…自分は疎いらしい。]
へぇ…楕円の形をした船ですか…それはまた、可愛らしい…。
[そう言うと、男は何とも言えぬ顔をする。そして、アンタもか…と呆れたような声が聞こえた気がしたが、酒場特有のざわつきの中へ消えた。]
ダーフィト。僕はトールです。
[彼の親しみやすい雰囲気のせいなのか、つい呼び捨てにしてしまう。
あっという間に立ち去ってしまった彼を呆然と見ながら、些か多いチップに、お礼すら言えていないことに気付いた。]
ネオ・カナン……行ってみましょうか。
[目的地は、こうして呆気なく決まる。
もし船で会えたなら、このチップ分の演奏を受け取って貰えるだろうか?]*