― 修道院側/北岸 ―
[北岸にいた弓兵たちは小舟を視認していたが、そこに羊が乗っているのを見て射撃をためらっていた。誰かが口笛で羊を呼ぶが、羊たちは揺れる小舟の上で怯えて固まり、動こうとしない。
吠える犬はとうとう浮橋の近くまで来て、小舟が止まれば水に飛び込みそうなそぶりを見せている。
北岸に残る長物隊は、舟と共に迫る騎兵に対して身を寄せ合って固まりを作り、それぞれの得物を前に突き出す。
得物と言っても長槍などの武具は数えるほどだ。多くが干し草を集めるフォークや鉤であり、草を刈る大鎌であり、その他の身近な長いもの、である。
それでも揃えて突き出されたそれらは、それなりの壁を形作る。]