大丈夫、もう大丈夫だ。 もう、この手で誰も殺さなくていい――… 死と血の匂いと、怨嗟の声を聴かなくていい 自分が壊れないように、自分のことも大切にしていいんだ。 船の方には、私からも便宜を図ろう。[そう囁きながら、 両手でそっと包むように、彼の手を握りしめようとした。 せめて、少しでも、彼の苦しみと恐怖が やわらぎますように、と願いながら。 ]