[靴の踵から、とっておきのシルバーナイフを飛び出させる。とっておきの理由は、高価なのもあるけれど、材質が材質だけに一度使えばなまくらになるからだ。けれども、今は銀の刃が功を奏した。苦労して掴んだナイフで縄を切る。吸血鬼の力で作られたらしい縄は、銀の刃であっさりと切れた。疾走する狼の背中から転げ落ち、街路の端に空いていた穴―― たぶん、図書館の屋根を砕いたのと同じ力の仕業だ――の中へとさらに落ちていく。落ちる先は、おそらくは街の地下に縦横に伸びているらしい地下墓地だ。*]