[それは以前、の話。
一つなのか二つなのか曖昧な気配が、足元に遊んできたことがあった。
くるくると愛らしいそれに惹かれ、尾を持ち上げたツィーアはその気配のあたりへ振り下ろした。
黒竜ナールのような反応を期待したのでもあるし、そうでなければ文字通り取って食おうという、いわば好意的な意志で。
しかし、機敏に打擲を躱した気配は見る間に遠ざかり、それっきり、ぱたりと間合いに近づいて来なくなってしまった>>125
それから数日のあいだ、魔法兵器の光は沈み込んだ色のまま戻らず、魔王の声にすら反応しなかったほど。
以来、かの長耳双子と似た匂いの命を知覚するとそわそわするのだし、今も足元に寄ってきた命があればじゃれかかる癖は変わっていない]**