―16年くらい前―[ずっと一人だったから、兄妹というのが、とても嬉しくて。おそるおそる、「お兄ちゃん」と呼んでみた。熱でふらつく身体と舌たらずの口調に、ゲルトお兄ちゃん……ゲルト兄……ルゥ兄と、幼い声での呼び名は、段々短縮されて。最後の頃には、かまってほしくてゲルトの後を付いて回り、今度は、帰りたくないと、ぽろぽろ泣いて。……やっぱり、困らせてばかりいたような気がする。今思えば、幼い頃の自分は、本当に何も知らず、ただ、甘えてばかりの我儘な子どもだったから……]