[ そうして歩き出してから名前を名乗られたり
尋ねられたりしたなら"ヴィクトリアと申します"と
名を名乗っただろう。>>177
やがて血液のツンとした臭いが漂ってきたのなら
立ち止まる彼をよそにその横をすり抜けた。
どうしたの?と掛けられる声に返す言葉は
────虚ろ
"じんろう"による被害者が出た事を
この方はまだ知らなかったのだろうか。
彼の反応は、その惨劇を今知ったように見えた。
ふらりと歩く私に彼はついてこなかった。
ショックを受けたのだろう。
私は血の臭いを追う。
私の背中に注がれる危険な光を宿した視線には気付かぬまま。 ]**