[一つの場所に留まるときには、その場所に縁のある者は食べないように。旅人や、いなくなっても気にされないような、罪人などを狙い、死体は必ず隠した。自分たちの存在を知られぬように。…村の近くで見つかったという死体は、少なくともゲルトの仕業ではなかった。
そして人間と仲良くなっても、いずれは離れなければならない。何故なら、自分は彼らを食べる生き物なのだから。
この辛さを子どもに背負わせる気はないから、女性と付き合ったこともない。どうしても寂しくて、男性と肌を重ねたことは、あるけれど。
祖父が死んでからは、本当に一人ぼっちになった。苦手意識を抱きながらも、モーリッツを完全に避けなかったのは、祖父を思い出していたからだろう。 ]