[時折強く吹く風が木々をざわめかせ、鳥の声は既に、遠い。
嵐にでもなるのだろうか、――なんてぼんやりしていれば、指先に痺れるような痛みを覚え、顔を顰める。
余所見をしていて何処かに引っ掛けたらしい。さっくりと切れ表皮の下に隠れた鮮やかな色を晒す傷口から溢れる赤色を清んだ湖に沈めて適当に洗い流した後、尚も滴り零れるそれを指ごと口に含んだ]
……――――――甘い。
[うっとりと機嫌良く目を細めぽつり、呟き零せば、傷口を押し潰すよう歯を立てる。広がる鉄錆に似た匂いが鼻を抜けた。
其れ程深くはなかったらしく、程無くしてある程度出血が収まった事を舌で確認すれば、適当に服の裾で拭い、後は気にせず作業に戻り――…**]