抜く? 何故。
折角二人きりになれる場所に来たのに?
私を誘うだけ誘って、その気にさせたのに?
[笑う眸は赫の色。
空の色は透明度の高い藍色。時間経過とは縁遠く。
彼の主張は、何の枷にもなりはしない。>>197]
私はこの城に、然したる感慨を持たない。
ただ、財を納めておくためだけの箱だと思っている。
――――― が、
[数歩を踏んで、彼の背が崖際に聳えた太い老木にぶつかる。
支え以外の衝撃を背後から受け、収まる熱源が角度を変え。]
君と各所に想い出を刻むのは心惹かれる。
[グ、と彼の下腿を折り曲げつつ、膝裏に腕を挿し込み拓かせた。
帰宅早々淫蕩に耽る古城の主は、呆れられても仕方ない。]