― 幼い頃 ―
[幼い頃は森の中の小さな屋敷>>145が、世界のほぼ全てだった。
母は小さな娘を、森の中だけに囲おうとして――…
外の世界へ行かせるのを嫌ったから。
レジーナやオズワルドや、先生達や……時折遊びに来てくれる
人達の訪いを、どんなに待ちわびていたことか。
母は、娘を想いはしても、抱きしめる人ではなかったから。
黒髪の男の力強い腕とは違う、柔らかくていい匂いがして、
どこかくすぐったいのに、胸がいっぱいになるような、
レジーナの抱っこと笑顔が>>166が、大好きだった。
帰り際にはいつも、「いやいや、まだ帰らないで…っ」と
瞳にいっぱい涙を溜めて我儘を言って、
客人達を困らせていたような記憶がある]