―回想:6年前―
…なー、リエ。水…。
[大泣きした上にそれを誤魔化す為に飲み過ぎた。
今日の出来事は、きっと後々の語り草になるだろう。
過ぎた酒に鈍く痛む頭を押さえながら、男は傍らの幼馴染みに水を所望する。
教会から貰った金によって、妹の結婚式は滞りなく終えた。
美しく着飾った妹を見送る気分は半ば親。
住み慣れた家を離れて教会の研究施設に赴けば、彼女ともなかなか会えない寂しさもあっての無茶だったとは思うが。]
……綺麗だったなー、あいつ。いつの間にか一人前の女になって。
[小さい頃は自分の傍を離れなかったくせに、と幼い頃の事を思い出して寂しげに笑う。
本人は口にしなかったが、彼女も年頃の娘だから綺麗な服を着たかっただろう。
仕方ないとはいえ、随分と我慢を強いていたと思うから、せめて晴れの日には着飾らせてやりたかったのだ。苦楽を共にして来た妹には、世界一幸せになって欲しいと思っていたから。]