それを称して楽器のかっぱらいっていうなら、俺も常習犯だわ。
楽器じゃなくて、会った連中の歌だったり音だったり色々、だけどな。
お前との記憶がギターの音、な。
いいな、それ。
じゃあ俺は――バイオリンでもいいけど、歌でも付けるか。
いっとくが、我ながらあきれ返るほど音痴だ。
絶対忘れられないこと請け合い。
[そんな冗談を交えて返しながら、返した笑顔は常の物より少し幼いものだった。
今こうして、あたたかな――なんか本当に、何がどうなってるか不思議だけど悪くない味というか――飲みものが喉を通れば。
全部ひっくるめて、ありがとう、と。
言葉を返すまでに、どれだけ時間がかかったのかと、我ながら溜息をつきたくなる心境だけれど。
漸く伝えられたので、少し、安堵した。]*