お兄ちゃんのお下がり、ってやつか。 なんか、―――いいな。[剣を手にして、笑う。それはお下がりという呼び方がそぐわない位、手入れの行き届いた綺麗なものだったけれど。そんな風に口にしたのは、憧れを抱きながらも、自分の身には無縁のものであったからだ。家の兄と自分との間には距離こそ近いものの、血によって引かれる明確な線がある。けれど、士官学校の「兄」とは血こそ他人でも、繋ぐもの、継がれる何かがあるのだと。六年間の絆が今、この手にあるようで。嬉しかった。]