[蹴りだす直前、全身を走る激痛。痛みを殊更強く感じるのは、項に残された印。鳴りを潜めていたそれは急に動きを見せ、胴を、腕を、足を、顔を、全てを覆うように印が這う。その間にも闇は広がり、今は身体一つ飲み込めるほどの大きさ。既にそこが階段であったことなど感じさせぬ程。痛みで蹲ったせいで両の足を取られ、もう抜け出す事は出来ない。迫る闇の底は見えず、深淵を覗き見る様に似ているなどと、薄らと考えたか]