─ 雷華の領域 ─
[そんなガートルートの心中を知ってか知らずか。
もう浮島を繋ぐ道を渡り切った辺りで青年が漏らした、質問の形をした小さな疑問。>>188
耳に届いたそれに、男はきょとりと目を瞬いた。]
なぜお前かって。ああ、
[言いながら、ふわりと狼の背から飛び降りる。
二頭が足を止めたのは、島へ渡って初めの森を抜けた向こう、一面の雷花が咲く野原。
そこに、小さめの家ほどの円形の建物が、幾つか連なっている。
先に地へ足を着けたガートルートは、未だ狼の背の上のルートヴィヒに両手を差し出す。
彼が飛び降りるにはやや高い。従者であると理解した青年が拒もうとも、あっさりと抱き上げて。]
言っていなかったな、すまん。
好きだからだよ。
[片腕の上に座らせ、その背を支え。
上背のある己よりも今は高い位置にある青年の顔を仰ぎ見る。]