私には暴食の慾も、虚栄の慾も薄いが、
カレルレンは此処の瘴気に慣れるまで、食事を得、水に慣れた方が良かろう。
[男には衣食住が必要でなかった。この広大な古城も元を糾せば、永年の中で細々と集めた財を仕舞っておく為の宝物庫代わり。
生活を正しく営む為、城を機能させるなら、其れは彼だけの為に。]
……無論、私も付き合おう。
幼児が遊ぶ飯事のようだが、此れが最も手っ取り早い。
[彼と同じ糧を得、同じく身を清め、同じ寝所で眠りにつく。
想像させるのは、自棄に甘たるいこれからの日常。
ひとりで永年を過ごしてきた身は今更不完全に。>>193
完璧な怪物は、彼を手に入れ、欠けていく。
空隙をひとりでは埋められないことを知り、彼を知った。
繋いだ掌に寄る辺を見出し、そっと握り返す。>>194
白く、美しい指先は、一人では繋がることの出来ないもの。]