[掠めても触れぬ口唇、前髪だけが存在の近さを伝えて、それは大分もどかしい]……リエちゃん、焦らしてる?[やっぱり尖らせた口唇は、ともすればねだるようでもあったけど。彼の口から真面目な言葉が零れれば、勢いでうんと頷いてはいけない気がして、少しだけ考えてみる。確かに大事な友達で、ずっとそう接していた。ただ好きでずっと一緒にいたい、それだけの気持ちは、わんわん泣いた幼いあの日に閉じ込めていたのだから。長く続いた関係性をいきなり変えられるかは、わからない。]