― クレイエラの森・上空 ―
[舞い上がった褐色の翼は、数度の羽ばたきの後、気流を翼下に捉える。
羽ばたきの動作は最低限の飛行は、文字通り空を滑るが如く。
隠行という事と、飛ぶに不慣れなシュテルンを乗せている事。
それらをあわせ、影竜も少年も、いつもよりは穏やかな飛行を心がけていた]
……今んとこ、静かなもん、か。
[舞い上がってしばらくは、静かなもの。
けれど、目的地へ近づくにつれ、影竜の紫紺の瞳が周囲を忙しなく見回す回数が増え始めた]
……ルアル?
なんか、感じるか?
[それが、何かを感じているときの仕種なのはわかるから。
首筋を叩きつつ、短くこう問いかけた。
返るのは、きゅぃぃ、という肯定の響き]