―― 回想 ――
[そういえば、困っている誰かを拾うのは、船長だけの話でもなかった。
詳しい話を聞かされたわけではないので、事情はよく知らないのだが、船員が連れてきた誰かもいた。
彼女がこの船にやってきたのは自分が来るより前のことだったか、いた頃のことだったか、どうだったろう。>>116
その日もゲオルグと勝負をして、フォークにイチゴを突き刺したまま通路をまっしぐらに逃げて、逃げて。
捕まらないようにどこかに隠れようと、ドアの隙間から滑り込んだそこには、先客がいた。>>78
金色の髪が、ぱっと目についた>>98。
その先客は自分よりはいくらか年上に見えて、この船にいる他のひとたちよりもなんだかか弱そうな感じに見えたものだから、ごめん! と謝る声は、自然と少し、抑え目なものになった。]
ちょっとだけ匿って…!
[なんて、真剣な顔で言いかけるも、
ふと見たそのひとの顔色が、あまり良くないようにも見えたから。>>78
どうしたらいいのか分からなくなって、追ってきているであろうゲオルグのことも頭からすとんと抜けてしまって、おろおろと辺りを見回して、
ふと、手にしたフォークと赤いイチゴに視線が止まる。]
……これ、あげる。
[そうして、そっと、それを差し出してみたのだ。]