[――うつ伏せる彼女の髪に、そっと手をかざし口付けを落とした]
――ありがとう。
僕みたいなろくでなしにも、こんな風に泣いてくれる人が居るなんて、想ってもみなかった。
君が、そんな風に想ってくれるだけで、有り余る程の幸せだ。
[今この時を、君のその美しい涙を、時間を止めてずっと眺めていられるなら――]
でも僕はもう、君の気持ちには応えてあげられない…
[名残惜しく黒髪から手を放す。
叶うならその黒髪もその涙も、全て僕だけのものにしてしまいたい。]
――許してくれ。
君の心を傷つけて、こんなにも深い悲しみを負わせてしまった僕を。
君の心を知っていて、それでもなお深い眠りの底に焦がれている、
薄情な僕を許してくれ…!