― 回想 ―
[あれは一昨年、風花の村に遅い春が訪れた直後。
人手が足らず猫よりはましとの理由で、積もった雪の重みで壊れた柵の修理を手伝わされた。
しかし金槌を持てば、釘ではなく自分の手を打つ。一輪車で木切れを運べば、途中で転んで盛大に散らかす。…要するに散々な結果に終わった。
ゲルトの父が丁寧に怪我の治療をしてくれたものの。ため息混じりに言われた。]
「ヨアヒムは絵筆以外の道具は使うな。
却って皆の仕事が増える。」
[ヴァルターがこれを覚えているかどうかは定かではない。
しかし屋根の修理を断念した判断>>26>>50が的確なことは間違いない。
去年父の診療所を継いだゲルトにも、切り傷や擦り傷、打撲程度の怪我を治療してもらっている。]