─回想・アースガルドの地─
[ 十年と少し前から、アースガルド王国には
『ラグナロク』と呼ばれる兵器の調査で潜入していた。
身分や貧富の根強い格差の存在するこの国は、
共和国の出身には簡単に馴染めずにいた。
豪遊を尽くす王侯貴族。
目から光が消えた低社会層。
国全体から不穏な空気が漂い、反逆だ決起だの噂は
頻繁に耳に入る。
クレステッドは元来戦いを好む性質では無い。
寧ろ嫌いな方である。
調査員として王国に滞在していたクレステッドの待遇は
決して悪くは無いのだろうが
「余所者が何を探っているのか」と
好意的に扱われることは少なかった。
国の不穏な動き、戦争の影が散在する地。
現在の任務の解任を直訴しようとした時のこと。