[ 本来は居ないはずの者……>>90
ということから、ふと、三年前の"門"での事を思い出した。
シェットランドやローズマリーの後ろに隠れて震えていた、一回り小さな少年>>171。
……見たことのない顔だった。
テオドールが知らないということは、あの少年も、「誰か」が消えた代わりに居ることになった者なのだろう。
あの「遠足」は、ソマリアラン推薦の新人騎士達を連れた物だった。
ということは、ヤコブ並みに期待されている者なのかもしれない。
イングリットを呼んで調べさせようか、と思ったが。
……いや、と打ち消した。
襲撃の前に立ちつくすだけの者など、どうせこの三年の間に、
どこかで野たれ死んで居るだろう。
そうでなくとも、これからの戦いのどこかで消えるはずだ。万に一つも"門"にたどり付くことなどあり得ない。
優秀な情報収集者を充てるなど、人材の無駄遣いだ。それでなくとも、魔軍には信頼のおける士官が不足しているというのに。 ]