[それだけ言っては見送ったのだったが。
そんな俺も彼女の前を辞す時になって、一つの質問を口にした。
分からない、と述べてから曖昧に笑って見送る姿に何を思うでもないが。>>91
ただ、それが後まで彼女を悩ませるとは思っていなかったのだ。
“真実の嘘” 、なんて尋ねたのは、本当、呆れるほど一瞬間の迷いだ。
ただ、それでも安直な答えがなかった分、俺としては意外でもあった。
暁があるなら、日暮があるのは当然の事なのだ。
昼があるなら、夜があって然るべきだ。
それでも、気儘な俺は誰かの下に付く、なんてまだ考えてはいなかったのだ。
この時は、まだ、全くと。]**