― 移動中 ―
[次の土地へと向かう途中。
どこからともなく漂ってくる香ばしい匂いに、ごくりと唾を飲みこんだ。]
なぁ、腹減らないか。
ちょっと腹ごしらえ、とかどうだ?
[と提案したところで、炉の利き手は塞がったままである。
これでも食べられるもの、と考えて。駅を降りてすぐ見えてきた店構えを指差した。]
たこ焼きなら片手でも食えるんじゃないか?
[了承が得られれば顔が綻ぶ。
たこ焼きの香ばしい匂いもさることながら。
もうしばらくの間、繋がったまま。温度を感じられる距離にいられることが嬉しかった。**]