[蛇は首を伸ばし、白い息を吐いた。息は霧散することなく濃さを増しながら広がり、霧となって戦場を覆った。蛇の姿もいつしか拡散し、霧の中へと紛れていく。天でもなく地でもない、空に低く立ち込めた霧は、時に降下する天の御使いを取り込み、時に食腕にも似た一部を伸ばして地の悪鬼を攫った。霧に巻かれたものは、等しく精を吸われ血を失って干からびた姿で落ち、砕ける。一つ命を吸うたびに霧はより濃く深くなり、しんとした冷気で戦場の一角に沈黙をもたらした。]