― パン屋 ―
[衣服を取替え、階段を降りた自宅は、毎日不思議な香りがする。
香ばしいパンの香りが、特に朝の間は強いのだが。
加えて、店棚に並ぶ骨董品や精緻な人形達は、微かにアンティークの匂いを漂わせる気がしないで無い事を、良く、良く知っていた]
……まただ。
[卓や椅子の色合いは比較的シック。
壁こそ清潔感あふれる白だが、これで焦茶色をした木目豊かな木造建築でもあろう物なら、パン屋と云うより本格的にアンティークショップに鞍替えすべきだと勝手に考えてる。そんな区切られた空間の中でひとり、目下冬眠中の存在に溜息]