―パン屋―
[ペーターとリゼットの嬉しそうな顔に>>175>>178、自然と顔が綻ぶ。
そしてリーザに旅の理由を尋ねられれば、少し驚いたように目を開いて、
――やがて、言葉を選ぶようにして答えた]
僕が君くらいの頃に、母を亡くしてね。僕は孤児になった。
その当時、この村に来ていた神父様――ジムゾン神父の先代にあたる方なんだけど、随分と世話になったんだ。
神の使いたる神父様への恩に報いる為、神に感謝し、その愛に触れたいと願った。神とのつながりを確かめる為に、人と神を繋ぐ聖人たちの遺体や聖遺物を参拝しているんだ。
それに――
[ひとつ、言葉を区切る。
わずかに目を伏せ、首を振った]
……いや、なんでもない。
旅をする理由は、それだけだよ。
[『おぼろげな記憶にしか残っていない、生まれ故郷が見つかるかもしれないから』
飲み込んだのは、そんな言葉だった]