[ しかしそれも崖の下とならば首を傾げる。
どろりとした闇を覗く退屈の面白さが
言葉だけでは分からなかったからだ。
だが、次の瞬間身を硬くした。 ]
あの、……クレメンス。
そろそろ、抜いてしまわないの?
[ そうして未だに繋がったまである下肢を
見やりながら僅かに腰を捩る。
するとほんの隙間から垂れる一滴に
睫毛が震えた。
これは良くない傾向だと思いながらも
時たま気紛れに突かれた奥は、
今や別の器官のように彼に馴染んでおり
なんだかこのままだとよろしくなく思えた。 ]
ぼく、もう元気だから大丈夫だよ。
ほら、もう透けてもいないし、
何もしなくても消えないんじゃないかな。
[ だから抜いて、と言外に告げながら
視線は崖の下へと向く。
好奇心が盛んなのも幼さ故なのかどうか
曝け出す無防備さは彼だけのものだった。 ]*