― 魔軍本隊 ―
[前線へ到着した魔軍の本隊を迎えたのは、燃え盛る炎の回廊だった。
数多の屍兵を焼き、未だ火勢衰えぬのは工作兵らの尽力の賜物。
恐るべき炎の中を突っ切って進軍しようという無謀は、さすがに愚鈍な亜人たちの中にもいない。
意を決した狼牙の一匹が、燃える柵を避けて砦へ近づこうと試み、複雑に配置された策の内側へいつしか誘導されて炎に巻かれ、絶命する。
それを目の当たりにしたものたちは、いっそう慄いて立ち尽くした。
この炎の猛威の前では狼牙の俊足も、鉄底の堅牢も役には立たない。
停滞する進軍を、苦く見下ろすものがいる。]