[橋を使わぬ渡河を試みていたものたちは、ある意味ではより大きな災難を被ることとなる。
炎に巻かれた一部の者達がなりふり構わず水を求めて川へ駆け下り、渡河に手間取って固まっていた他のものたちをも巻き込んで水の中に折り重なり流されていく。
水に入った油は燃えながら流れ下り、岸辺へ炎を広げていった。
一方、背後で上がった火の手と、それによる惨状を目にした南岸の亜人たちにも混乱は波及した。
戦意を失くしたゴブリンやコボルドたちの一部が逃げ出そうとするのを、オークが斧で叩き切り、死骸を投石代わりに騎士たちへ投げつける。
一部のオークたちは炎と油の臭いで狂乱状態に陥り、理性の箍を吹き飛ばして吶喊を開始する。
もともとの膂力から箍の外れた勢いで振るわれる斧や棍棒は、人や馬さえ容易く吹き飛ばすだろう。
魔に属する亜人たちは、全体として戦いの狂気の度合いを増した。]*