覚えているだろう?あの頃のこと。
随分世話を掛けたからなあ……
良く、見限らないでいてくれたものだと思うよ。
[そうして椅子に腰かければ、苦笑めいた表情を浮かべ彼を見遣る。語るのは随分遠い昔のこと、共に10にも満たない頃の話で。
あの頃、ウェルシュは良く泣いていた。
兄のように剣も振るえず、馬に乗れば周囲をハラハラとさせていた。
そんな光景を覚えている人も、もう少ない。チェンバレン中佐は故人となったし、今いる主だった面子としては兄とリヒャルトの他には、剣を教えてくれたアレクシス・レグザくらいか。>>0:288]