―回想:天使が見守っていた村―
[この魔族は、相当な偏屈らしいというのはこの短いやり取りの間で察した。
嫌がれば嫌がる程、彼のえくぼその顔に深く刻まれ、子供が虫の足をもって振り回すように、人の命を弄ぶ。
気が変わって、目的と手段が入れ替わり―村人たちの殺戮を試みないとも限らない。
そう、振り回される新郎新婦>>147に焦り、離せ、とだけ言えば、その瞬間手を放し放り投げる恐れもあった。
引くことはできず、さりとて攻めることもできない。
ピン、と張られた脆く細い糸の上を裸足で歩かされているような緊張感と鬩ぎ合いに、手袋の下の肌がぬるり、と汗ばむ。]