[激流のような亜人たちの流れを割りながら、ナールは悠然と歩いて鉄底族の陣へと近づいていく。
黒竜の背から降りぬまま、魔王は手を挙げた。]
我が騎士たちよ。
あれらを逃がすな。
ドワーフどもの命を刈り取り、我に捧げよ。
[言葉が風に流れて間もなく、崖の上から滑るように音もなく七つの影が降りてくる。
灰色の騎士。七の騎士。崖の上で恣に人間どもを刈っていた霧の騎士たちが、主君の命に応じて集まってくる。
彼らは途中を遮る亜人の群れなど無いもののようにすり抜けた。
首のない馬は、垂直の崖であろうと構わずに駆けた。
そして、彼らの周囲からは濃い霧が吹き出して峡谷に溜まり、夜の闇をさらに深くした。
冷え冷えと霧の取り巻く戦場に、死の騎士の白刃が閃く。]*