― 作戦実行前:F6待機中 ―
[付近に警戒を払いながら作戦開始の合図を待つ。
足元に散乱する硝子の破片や積まれた瓦礫は、付近に存在した家屋の残骸だろう。
戦渦に巻き込まれ、打ち壊されたのだろうか。
それとも、追い立てられるようにこの地から逃れる時に、住人が打ち壊して行ったのだろうか。冷酷非道な軍靴や馬蹄によって、思い出が踏みにじられるくらいならばと。
豊かであったシュヴァルベの街並みはもうどこにもなく、
若い記憶にやわらかく彩りを添えてくれた噴水も花壇もない。
遠く続くのは、土に還らんとする生活の跡。戦の爪痕。]
(確か………)
[馴染みの店も、あの辺りにあったはずだ。
記憶の残り香を辿るように、後方の市街地跡を臨む。
想いは一時、過去に飛んだ。]