[扉の向こう、男が立つ位置まで、彼らの声がすべて届くことはない。
だが複数の見知らぬ魂と相対するように、二つの気配が確かに存在した。]
……気に入りませんね。
[それでも僅かに届く音色たちは、あたかも自身たちが絶対的な正義であるかのような響きを持っている。
前庭で言葉を交わした男とは異なる考えは、教会側が決して一枚岩ではないことを示しているとも言えよう。]
壊れてしまえばいいのです。
[薄い唇を笑みの形に歪めて、力の高まりに一つに結った細い髪が揺れる。
見知った者であれば、己が気配を感じ取ることもできよう。
周囲を守るように浮かんでいた大量の水玉が震え、凝縮した鋭い弾丸となったかと思えば、沐浴場の扉を貫いて、室内へと叩きこまれた。]