[モーリッツは最近では冬になる度に「不吉じゃ。」と言い回っているとの噂らしいが、何分仕事が忙しくてめったに遭遇する機会がない。前回会ったのは、確か三ヶ月くらい前だったんじゃなかったっけ?と記憶を引っ張り出しつつ、切り株に腰を下ろすモーリッツの顔を覗き込む。]モーリッツさん。僕ですよ、オットーですよ。[抱えたかごの中からは、焼きたてパンの匂いが漂っている。これを見ればパン屋の息子のオットーであることは明白だろうと思っても、一応名前を名乗った。]