[医療モードのスイッチが点灯し、出血の酷い右腕の治療が始まった。]
……ふっ、そんな顔しなくっても
……大丈夫だから。
握ってくれてるから……
手、あったかいしね。
[まさか彼が自分の腕を掻っ切って、輸血しようかと考えたとは知らず。
不安です、心配ですと顔に書いたような彼>>172に、横たわったままで微笑んだ。
血を失ったせいで顔色が悪く見えているのかもと、普段より口角を持ち上げて。
止血と縫合、おそらくそれくらいのものだろうが、血が出続けるより良いに決まっている。
その間中、両手を握ってくれていたことに、じわりと胸が温かくなるような幸せを感じながら。
あったかいなぁと、目を細める。
彼の手は人にぬくもりを与えられる手だ。
その手が血色に染まっていようと、唐突に聞かされて驚いただろう自分の過去に、真摯に向き合い頭を撫でてくれた優しい手だ。
そう思うことは、セルウィンや他の犠牲者たちに非難されるのかもしれないけれど……。
今、この時、この瞬間は、そう思うことを許して欲しい。]