[ストンプと呼ばれる造船の街を訪れたことはないが、あながち無縁とも言えず。
12歳の誕生日に何が欲しいと祖父に問われたアレクトールは、「戦艦」と答えた。
「おまえにはまだ早いな」と祖父は笑ったが、死後、残された遺産の中に「皇太孫の戦艦資金」と銘打たれた蓄財があり、何事につけても舅に従順だった父は、それをそのままアレクトールに委ねた。
数多の図面を取り寄せ、模型を作り、アレクトールが気に入ったと選んだのは、ストンプから送られて来た中にあった無記名の図面だった。
力強く壮麗。進水式の音楽が聞こえてきそうだと思った。設計者の夢に感応したのかもしれない。
何故、無記名なのかについては「習作だから」とか「コンペに出すと差し障りのある名だから」とかいろいろな憶測が飛んでいたが、ついに解明されないままだ。
さまざまな改変は施したものの、その図面をもとに、アレクトールは10年越しの誕生日に念願の