― 魔王城最深部 ―
[ 勇者一行の一番後ろ、魔王と正面から対峙するクロートの陰に隠れるように立つ聖王家の名もなき王子の姿は、魔王からは意志も力も見えぬ存在と映ったか。
投げられた声>>110に、アルフレッドは静かな笑みを返す ]
今の俺は、王子としてここに居るのではない。
[ 『お前の信じる道を征け』そう送り出してくれた兄の言葉を胸に、聖具も兵士も持たぬのは、旅の中で得た別の力を、そして仲間を、何よりもクロートを信じるが故 ]
だが、我が祖先がお前の領を奪ったと言うなら、これだけは言おう。
魔の王よ。人にも魔にも、お前の眠りの間にも続けてきた営みがある。お前にとってはひとときの眠りでも、生きる者にとっては長き営み、それをすべて、お前の睡夢と断じて消そうとするは、傲慢に過ぎない。傲慢によって民を犠牲にする者を、俺は真の王とは認めない。
[ 交わる事のない人と魔の主張は、結局のところ、ただ互いの差を際立たせただけかもしれなかったが、何も言わずに済ませることもできなかったのはやはり、王子としての自覚ゆえだった ]