― 城内・庭園 ―
[ 絵についての講釈を
真面目に聞いているとは思わず、
また聞かせるように丁寧に話すわけでもなく
暫し画家が絵について話す声と、
背後でがさごそと何か食べる音が調和していた。
ローレルがその間振り向くことはなかった。
音で気が散ることはなくとも、
空の模様も風の流れも目を離せば変わってしまう。
闖入者の正体について如何であれ、
描きかけの絵から目を離してまで
話に集中する相手とは思ってはいなかった。 ]
『 画家も詩人も才あるだけではやっていけない。 』
…ボクの養父の口癖でね。
賢明な答え以外は選ばないように心がけているんだよ。
[ 東屋の外に見える青い空。
雲を描き加え、壁を這う蔦を描き加え、
重ねて色を入れようかと言うところで――振り向いた。 ]