[黒き帆船から流れ落ちた水は滝となり、箱舟の側面を洗い流していく。途中で散った雫が陽光を含み、ほんの一時、虹を掛けた。舳先に横たわる天の子の身体もまた、己の流した血と聖句の変じた糸とによって、小さな繭に包まれつつあった。蒼穹の眩さに穏やかな影が差し、気配の方へと頭が傾く。そこに浮かぶ姿を見たか、あるいは視覚以外で感じたか、唇は幸福の笑みのままにあった。]